リヴァーブ・タンク
プリンストン・リヴァーブに搭載されているリヴァーブ・タンクは4AB3C1Bという型番で、ツイン・リヴァーブなど多くのブラックフェイスと同じタンクです。フェンダーのスタンド・アローンのリヴァーブ・ユニットのタンクともほぼ同じです(マウント方法が異なるので互換性はありません)。プリンストン・リヴァーブは元々練習用のアンプとして設計されていますが、リヴァーブに関してはブルースJrなどと違ってフェンダーの上位モデルと同じ水準の音質です。ストックではアキュトロニクス・ブランドのタンクが搭載されていますが、他のメーカー製のタンクでも型番が同じであれば互換性があります。型番は下記のように読みます。4:リヴァーブ・タイプ タイプ4
A:入力インピーダンス 8Ω
B:出力インピーダンス 2,250Ω
3:ディケイ・タイム ロング(2.75〜4秒)
C:コネクター インプット側が絶縁、アウトプット側がアース
1:ロック装置 なし
B:マウント方法 水平にして開放面を下側に
ストックのアメリカ製アキュトロニクス(現在は韓国のベルトンがアキュトロニクスを買収したので韓国製)の予備で購入したMODの4AB3C1Bが予想以上に素晴らしい音質だったので、現在このタンクをマウントしています。販売側の謳い文句としては、オリジナルのハモンド・アキュトロニクスのタンクと同様に、RCA端子のメス側からトランスデューサーにコネクターを介さず直接配線されていることで外部からの干渉を受けにくいことと、トランスデューサーの製造方法にもこだわっていてヴィンテージ寄りのサウンドになっているとのことです。
正直このあたりの事情は機械的にはよくわからないのですが、2000年代のアメリカ製アキュトロニクスと比べると聴覚上、音の開放感、明瞭度、かかりの深さにおいて、MODが勝っていると思います。質感としては、アキュトロニクスがよりバネっぽく、MODが粒子の細かい霧っぽい印象です。ヴィンテージのアキュトロニクスのタンクはその個体の状態によってサウンドにかなり差があるので、MODがヴィンテージっぽい音かどうかという評価は自分の少ない経験上からは一概にはできません。ですが、実際にMODのタンクを採用してSole-Mateというスプリング・リヴァーブのペダルを製造しているVan Ampsのサイトには、「MODのタンクは現行品のなかで最高のヴィンテージな音質のタンクだと多くの人から評価されている」と書かれています。
リヴァーブ・ケーブル
シャーシからタンクへ接続されているRCAケーブルの接点のトラブルが多いので、リヴァーブのかかりが急に極端に悪くなった場合やノイズが発生する場合はまずこの接点を疑うべきです。洗浄や緩みの修正で回復する場合が多いです。また、オリジナルではシールド線そのものが被覆になっている線材を用いていますが、現在のような被覆付の線材よりもシールド線の劣化によるトラブルが発生しやすいので、見た目の好みで選択する以外にメリットはないと思います。Fender純正のケーブルが少し痛んできたのを機に、音質とシールド効果のグレードアップを狙ってBelden88760とSwitchcraftのRCAプラグでケーブルを自作してみましたが、スピーカーケーブルなどとは違って一聴してわかるほどのグレードアップにはなりませんでした。
アンプ運搬時の注意
経験上、運搬時には真空管よりもリヴァーブ・タンクが壊れる可能性のほうがずっと高いので、現在は、衝撃の加わる運搬方法の場合にはタンクを外して運搬することが多いです。スプリングが暴れないようにスポンジ等の緩衝材をタンク内に入れる方法が有効です。実際、MODのタンク購入時にはスポンジが挟まっていました。幸いリイシューは、タンクバッグがマジックテープで固定されているだけなので簡単に脱着可能です。
ツアー中に一度、タンクが壊れたことがあります。そのときはスポンジを入れないでの車での運搬と、ガタガタ道をカートに積んで転がしたのですが、サウンドチェック時に音がおかしかったので開けてみると、スプリングが根元から1本切れていました。仮に真ん中辺りで切れた場合はハンダでも一応修復が可能なのですが、この場所ではハンダづけも困難です。結局リヴァーブの目盛りをいつもの倍くらいにすることで対処して急場をしのぎましたが、音色的にはスプリング1本でも何とか許容範囲内の音が出せたことは驚きでした。切れたスプリングが動いたり、そのポジションが悪いとノイズやハウリングが入るので、そこだけ注意したほうがいいと思います。