V1 V3 V4
V1には艶、滑らかさ、立体感、力強さを感じさせる音質の現行Tung-Solの12AX7を使っています。音質的に好みなのと、入手も容易かつ低価格だからです。かつてのアメリカ製Tung-Solのレプリカですが、NOSと比較して全体的にハイゲインな傾向のある現行管のなかでもハイゲインな部類です。また、NOSと比べると短寿命ではありますが、ロシア製は全般的に現行品のなかでは寿命が長めです。ゴールドピン仕様、ロングプレート構造のハイファイなECC803という上級品もラインナップされていますが、ギターアンプで使うには上品過ぎてインパクトに欠けるかもしれません。V1の真空管選びには”12ax7 comparison”で検索すれば多くのレヴューがヒットしますし、YouTubeでもレヴュー動画が見つかります。特に下記の動画は参考になります。
12AX7 SHOOTOUT CLEAN FENDER TONES
NOSの12AX7は市場価格がかなり高騰しているので手が出しにくいですが、ブラックフェースのV1にはアメリカ製のRCAのブラックプレートでロングプレートのものがもっとも音がいいと言われています。下記の記事は広告記事の要素も幾分か入っているとは思いますが、非常に分かり易いので一読する価値があると思います。
The Tubeking's Guide to NOS and Vintage Audio Tubes
特に秋葉原やヤフオクでの購入に際してですが、NOSやヴィンテージの中古の真空管の入手に際しては、あまり詳しくない自分のような人間にとっては、偽物、リブランド品などと本物の区別がはっきりつけられないので、入手にはその種のリスクもついてまわりまることを念頭においておかなくてはいけません。
また、V1に関しては12AY7や5751の愛用者も多いので、ゲインを下げたい場合に試す価値はあります。ギターアンプでは双極マッチドである必要はまったくありません。V3も音に影響します。V4はほぼ影響なしですが、V1の予備管と考えると交換の意味はあります。
V2
V2のリヴァーブ・ドライヴァーには12AT7が使用されていますが、ここには音質と寿命の向上という点で、12AX7に比べてかなり安価で入手できるNOS管を投入する意味があります。GE、RCA、SylvaniaなどのNOS管に交換してみましたが、ストックのフェンダー管(EH管のリブランド)と比べると、いずれも音の輪郭と開放感が若干向上しました。ただしリヴァーブタンクのグレードアップのほうが効果が大きいです。リヴァーブが深くかからなくてもいいというプレーヤーは、ノイズ対策の点でゲインの低い12AU7に交換するのが得策とよく言われます。12AU7のNOS管は12AT7よりも安く入手できます。スタジオやライヴハウスにあるメンテナンスが不十分なフェンダー・アンプにはリヴァーブ・ドライヴァーが死にかけていてリヴァーブの効きが著しく悪いものがたまにありますが、実際V2は、V1、V3、V4よりも短寿命です。写真は現在使っているGEの耐震構造の軍用管で、ブラックプレートのものです。
V5 V6
V5、V6の出力管に関しては、ストックのGroove Tube管(Electro Harmonix管のリブランド)をそのまま使用し、バイアス調整のみ行ってホット寄りのセッティングにしてあります。最大プレート電圧で見ると、ブラックフェイスにはEH、ツイードにはTung-Solが適合します。Tung-Solをブラックフェイスで使用する場合は酷使することになるので、短寿命を覚悟のうえ、バイアス調整時にも配慮が必要です。ざっとまとめると、EHは6V6らしい中庸な音で耐久性も問題無し、JJはむしろ6L6に近い音でプリンストン・リヴァーブの泥臭さを洗練させたい場合に有効で耐久性も問題無し、Tung-SolはEHより音質はファットになるが耐久性に難あり、という感じです。いずれにしても、太くて温かみのあるクラシックなフェンダー・アンプのトーンを追求する場合は、6L6よりも6V6だと思います。
幸いリイシューは、バイアス調整POT(可変抵抗)が付加されているのでバイアス調整が容易です。調整方法はバイアス調整のページを見てください。クランチ以下での使用がほとんどで酷使していないせいもあり、5年以上使用していますがまだ元気に使えています。6V6はマッチドペア(特性の揃った2本)を入手する必要がありますが、NOS管は1本ならまだしも、マッチドペアはかなり高騰しているので、現場で気兼ねなく使用する場合にはやはり現行管のほうが現実的です。スペアを買う場合はマッチドクアッド(特性の揃った4本)で買っておくとバイアス調整の回数が1回減り、非常時にもすぐに交換して使用できるので便利です。
V7
V7の整流管にはオリジナルの5U4GBと比べてサグ(瞬間的な電圧の低下により生じる独特のコンプレッション)の少ないGZ34/5AR4が採用されています。しかしいずれにしても整流管の音質は、ツイン・リヴァーブなどで採用されているダイオードの整流回路と比べると温かみのあるサウンドです。逆に言えば音の立ち上がりが若干遅くもっさりしているので、ダイオードを好むプレーヤーも多いです。現行のなかでは無難と言われるストックのJJ管を5年間使用しましたがノントラブルでした。黒ずみが見え出したので、真空管の動作をシミュレートするWeberのCopper Cap(WZ34)に交換しました。重量があるので、リテイナ―も下から支えるスプリングタイプに交換しています。電源トランスの近くにネジ穴があってクリアランスが少なく、リテイナーの取付けは思ったより面倒でした。JJのGZ34から音質の変化は特に感じませんが、WZ34はトラブルがなければ半永久的に使用できることが選択の理由でした。現行ガラス管の選択肢はスロヴァキア製JJ、中国製曙光電子(Ruby、TADはこれの選別リブランド品と思われる)、ロシア製Sovtekのみです。
接点のメンテナンス
真空管全般に言えることですが、チリチリとノイズが入る場合はだいたいソケット部分の接触不良が原因なので、真空管を抜いて差し直すと直るケースが多いです。それでも直らない場合は真空管の足とソケットの汚れ、真空管のピンの歪みなどを疑います。とりわけNOS管は足が汚れていることが多いので、使用前に無水エタノールで念入りに拭いたほうがよいです。性能のよい接点復活材であるDeoxITで拭いてももよいですが、直接噴きつけるのはよけいな箇所に付着するので厳禁です。また、抜き差しの頻度が多い場合はソケットが緩んでくるので、時計修理用などの小さなマイナスドライヴァーなどで緩みを矯正するとよいです。真空管のピンも歪みやすいので、その歪みを直す専用の矯正器があります。12AX7や12AT7は9ピンのMT管なので、それにあったものを使います。6V6とGZ34は中央のガイドピンを折るトラブルがたまにあるので、ここに負荷がかからないように抜き差しします。GT管と整流管の8本のピンはMT管のピンより太いので通常は曲がりません。