スピーカー

スピーカーはアンプのコンポーネントのなかで、交換による音質の変化がもっとも期待できる箇所です。幸いプリンストン・リヴァーブはスピーカーが10インチ1発なので、換装の費用も1発分で済みます。また、12インチ化するプレーヤーも多いですが、その場合はバッフルボードの交換か加工が必要になります。
スピーカーの選択肢は非常に豊富で迷いますが、何年かかけてオリジナルのブラックフェイス、シルヴァーフェイス、リイシューと多くのフェンダー・アンプを弾いてみた結果、オリジナルのシカゴ製Jensenのセラミック、そして12インチが一番好みだということが分かってきました。具体的にはC12Nです。しかしヴィンテージのJensenは高騰していますし、スピーカーはそもそも消耗品であり、リコーンが必要となった場合は作業費用も高額で、音質が変わるリスクもあります。そのような考えから、現行品のなかでオリジナルのC12Nに近そうなWarehouseのG12CとWeberの12F150が候補にあがりました。実際に試すことはできなかったので、価格やレヴューを参考に、最終的にG12Cを入手しました。

12インチ化について

10インチから12インチ化するメリットですが、ローが豊かになるのはもちろん、10インチと比べて12インチは音の立体感がかなり増し、PAのない空間での演奏ではその性質が非常に好ましく感じられます。レコーディングにおいてもまた然りとは、マーク・リーボーとロバート・クインの説です。この2人はフェンダー・アンプにおいては12インチがベストと考えています。
また、非力な出力トランスや非効率なフェイズインヴァーターに由来するプリンストン・リヴァーブ特有のヴォリュームをあげた際の低音の濁り、ヘッドルームの低さ、パワー不足も12インチ化で一気に解決できました。それによってアンプのセッティングにもかなり余裕が出ます。それでもまだ気になる場合、12インチ化以外の改造方法として古くから一般的なのが、出力トランス(15W)のパワーアップです。デラックス・リヴァーブの純正品(25W)やそれと同等の出力トランス(TO20など)が用いられます。また、Stokes Modと呼ばれるフェイズインヴァーターの効率をあげる改造もよくおこなわれます。
逆に12インチ化の最大のデメリットは重量が重くなることです。また、本来10インチ用に設計されているキャビネットのため、10インチのほうがバランスがいいと感じるプレーヤーもいるでしょう。箱鳴り感や泥臭さを求める場合は10インチのほうが勝っていると思います。

Warehouse G12C



ヴィンテージJensenに近いスピーカーを製造するメーカーとしては、日本ではWeberのほうが認知されています。しかしWarehouseのG12Cも、fenderguru.comでかなりの高評価です。メーカーが謳っているとおり、JensenのC12Nに近いサウンドで、オリジナルとリイシューの中間にあたるようなサウンドですが、ちょうど中間というよりはややオリジナル寄りの印象です。音質的には派手さと深みのバランスがよくとれていて、12インチにしてはタッチに敏感なところが長所だと思います。Warehouseのラインナップではもっとも音色の明るいスピーカーのひとつということですが、リイシューJensenのようにハイが耳に刺さるようだったり、音がコリコリすると感じることはありません。また、G12Cは襞の入ったリブドコーンですが、襞のないスムースコーン版のG12C/Sもラインナップされています。これらの音の違いについては以下の記事が参考になります。
Smooth Cone vs Ribbed Cone Speakers
ごくごく一般的な意見を言えば、G12Cはブラックフェイス向き、G12C/Sはツイード向きということになると思います。


12インチ化にあたっては、キャビネット側の加工が少々必要でした。きれいに加工するのが面倒なので適当にドリルで削って上から黒く塗ってしまいましたが、上の写真程度に角を削る必要があります。また、スピーカーのマウント位置ですが、コネクター部分が電源トランスの磁界の影響を受けないように、下の写真のとおり、トランスと反対側の位置にコネクターがくるようにマウントするのがベターです。

スピーカーケーブル



スピーカーケーブルはBeldenの8470にSwitchcraftの#228で自作しました。スピーカー側は写真のように、ヴィンテージと同様にファストン端子を介さずハンダ直付けにしています。経験的にこのほうが音の鮮度がいいですが、ハンダ作業を素早く行わないとスピーカーにダメージを与えてしまいます。しかし急ぎすぎてイモハンダになってしまうと後にトラブルに発展するので、その注意も必要です。楽器用のハンダとしては定番ですが、Kester44は作業性がとても良好なので、このような部位にも安心して使えます。コンボアンプには、通称海ヘビと呼ばれるBeldenの9497のほうが日本では人気がありますが、8470のほうが重心の低い音で好みなので敢えて8470にしています。ストックのケーブルと比べると8470でも明らかに抜けがよくなります。自分の場合には、電源ケーブルの交換よりも大きな効果を体感できました。また、音を少しマイルドにしたければ、撚りを少しゆるやかにすることで調整可能です。

そのほか

音が直線的に出るのが気になる場合は、WeberのBeam Blockerという製品があります。自作しているプレーヤーもいます。