バックパネルの共振とバズノイズ

スピーカーに元々のC10Rを使用していたときは、バッフルボードも元々のMDFのものを使っていましたが、ある問題に頭を悩ませていました。それは、ある程度以上のヴォリュームを出した場合、低音の特定の周波数帯に反応してバッフルボードとバックパネルが共振して「ブイーン」という大きなバズノイズが発生してしまっていたことです。特に薄いバックパネルは目視でもわかるくらい共振して波打っており、手で強く抑えるとノイズが止むことを確認しました。この問題は、英語圏のプリンストン・リヴァーブ関連のフォーラムでも話題になることが多く、このトピックだけでいくつものスレッドが立っています。ライヴではまだ見過ごすことができるかもしれませんが、レコーディングで使用する場合は致命的なノイズになります。なお、近年の製造品ではこの問題が改善されているという報告もあり、工場出荷時のままでまったく問題ない個体もあるようです。

このノイズの対策としてもっとも優れた方法を書いているのがBillm Audioのサイトです。このページをご覧ください。非常に明快な記述なのでこれを参考にすれば事足りるのですが、大半のプレーヤーはルーターなど持っていないと思います。コメント欄の最後に追記されているとおり、アルミニウム材でなく木材でも十分効果があるとのことだったので、自分のケースでは写真のように、トーレックスを部分的に剥がしたあと、檜の三角材をタイトボンドで接着し、目立たないように黒く塗装しました。タイトボンドはギターの製造や修理で使用される強力な木工用ボンドですが、輸入品の品揃えが多いホームセンターなどで入手できます。この加工でも効果は十分で、バズノイズを駆除することができました。写真にはありませんが、バッフルボードにも同様の対策をしました。さらにスピーカーをマウントするネジは4本ですが、スピーカー側のネジ穴は8箇所開いているので4本増やして8本にしました。


また、この方法をとらずとも、スピーカーの交換で症状がなくなったという報告もあります。自分のケースでは、スピーカーの12インチ化と同時にパイン合板のバッフルボードに交換したのですが、そのことでバッフルボードの共振はなくなりました。

この問題の原因については、おそらくバッフルボード、バックパネル、スピーカーの材質や音響特性などが複雑に絡み合っていると思われ、誰も明快な解答を出していません。しかし、その一端を推理することはできます。ある報告によると、プリンストン・リヴァーブ・リイシューを、まったく別の種類の、普段はバズノイズを発生させないアンプのキャビネットに繋いだ場合にも、同様のバズノイズの症状が発生したそうです。この報告者は、回路自体が不必要なほど低音を発生させていることに原因があるのではないかと示唆しています。

フェンダー・アンプの回路図を見比べていたとき、フェイズ・インヴァーター・インプットのキャパシター(回路図C14)の値が気になりました。プリンストン・リヴァーブはこの値が.0220μFで、これはデラックス・リヴァーブ、ツイン・リヴァーブ、スーパー・リヴァーブの.0010μFより一桁大きく、元々ベースアンプとして設計されている59ベースマンと同値です。つまりプリンストン・リヴァーブのフェイズ・インヴァーター・インプットのキャパシターは、ベースアンプ並みに低域の信号を通過させていることになると考えられます。また、これはオリジナルの回路(AA164)でも同値で、リイシューになって変更されたわけではありません。これがもしかするとバズノイズの原因のひとつかもしれません。